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まんじゅうこわい

町で若者の寄り合いがあり、次から次へ恐いものを言い合いました。
「おれは蛇が恐い。あの動き方が嫌だ。」
「おれは狸が恐い。お化けに姿を変えるから。」
「おれはクモだ。クモの巣はねばねばする。」
「おれはコウモリだ。夜飛びやがる。」
「おれは毛虫だ。葉っぱの裏に隠れていやがる。」
「おれはアリだ。一列になって動きやがる。」
みんな恐い物を話す中で一人だけ黙っているものがいました。
「おい、松ちゃん。恐いものはないのかい。」
「恐いもんなんか何もないよ。」
「蛇もクモもお化けも恐くないんかい。」
「そんなものは恐くないよ。」
「蛇、そんなものは頭が痛いとき、頭にまきゃ涼しくならあ。」
「たぬき、お化けが出たら、料理して、洗ってきれいにしてやらあ。」
「クモ、納豆に混ぜてかき回してやらあ。」
「コウモリ、傘にしてやらあ。」
「毛虫、棒をさして歯ブラシにてやらあ。」
と突然話すのを止めてしまった。
「どうしたんだい。」
「恐いものを思い出しちゃった。」
「それはなんだい。ぜひ教えてくれよ。」
「まん、まんじゅうが恐い。」
「まんじゅう、そりゃどういう動物だい。」
「動物じゃないんだ。店で売っているものなんだ。ああ思い出しただけで気持ち悪くなる。」
顔色がみるみるうちに悪くなってきた。
「ああ、座ってられない。隣の部屋に布団をしいてくれ。」
床に入ると、とうとう毛布で顔をおおってしまいました。
これを見て、みんなは笑って、いたずらをすることにしました。 
数人が町へ出かけて色々なまんじゅうを買ってきました。酒まんじゅう、温泉まんじゅう、蕎麦まんじゅう、栗まんじゅう、赤まんじゅう、白まんじゅう、葬式まんじゅう、肉まんじゅう色々です。
おぼんにまんじゅうを乗せると、こっそり床に枕元に運び、気がつくのを待ちました。
「ねえ。松ちゃん。起きなよ。もうお開きだよ。」
「わかったよ。起きるよ。でももうまんじゅうのことは言わないでくれよ。」
「わかったよ。もう話さないよ。」
大きな叫び声が聞こえた。
「うわ、まんじゅうだ。まんじゅうが一杯だ。」
となりの部屋のみんなは大満足。
「おいみんな、どうしてこんなことをするんだよ。約束しただろう。まんじゅうこわい。まんじゅう恐い。」
大きな声をあげれば上げるほど、みんな大喜び。
「うわ、酒まんじゅうだ。恐い、恐い。」
「うわ、栗まんじゅうだ。恐い、恐い。」
「うわ、まんじゅう恐い。おいし・・。こわい・・。」
様子のおかしいのに気がついて部屋の中を覗いてみました。
「うれしそうだぜ。まんじゅう食ってるぜ。こりゃだまされた。ねえ、松ちゃん、一体何が恐いんだい。」
「おいしいお茶が恐い。」
そういいましたが、みんなはもうだまされませんでした。

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