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てんごくとじごく

あるときある男が自分が死んだあと天国と地獄のどちらに行くのだろう・・一体天国と地獄はどんな風に違うのだろう、天国に行くにはどうしたらいいのかとずっと気になっていたので、ある時天使が男の前に現れていいました。
「お前の知りたいことを教えよう。」
男は、うれしいようなこわいような・・でも思い切って天使の連れて行こうというところへついていくことにしました。 天使は男を連れてぐんぐん雲を超えて飛んでいきましたが、それはとても長い時間だったようなまたそれほど遠いところではないようなそんな気もしました。

気が付くと天使と男は『地獄』と書かれた大きな門の前に立っており、天使は門の扉を開け、「さぁ中に入ってみるがいい。」といい、男はおそるおそる中にはいっていきました。
門の中には大きな建物があり、扉を開くとちょうど食事の最中でした。
いくつもの長いテーブルがならんでいて、そのそれぞれの両側に何万という人たちが今まさに食事をしているところでしたが、なんだか様子が変です。 テーブルには沢山のご馳走が並び湯気を立ててとてもおいしそうなのですが、食べ物は一向減る気配がありません。
男は不思議に思っていると天使が「人々をよく見るんだ。」といったので、男は人々の様子をじっと見てみました。
ひとりひとりとてもながーいスプーンとフォークを持っていて、目の前に置かれた食事を食べるために一生懸命になって何とかして口に運ぼうとするのですが、スプーンやフォークが長すぎてなかなか自分の口にまで食事が届かず、途中でこぼしては悪態をつき、目をぎらつかせ、やれ隣のやつの手が触れたからこぼれただの、目の前に他人のフォークの柄が突き出して食べられないだの、文句をいうばかりで、とうとうこずきあいからけんかになり、そのうち食事の時間が過ぎてしまいました。
テーブルの食べ物はその後人々の見ている間に悪臭を放ち、腐ってどろどろにとけ、そこここに広がり落ちたかと思うと、食堂全体が真っ黒な汚い穴になって地面のそこに落ちていきましたので、人々はおなかをすかしたまま不平や不満を大声でがなりたて、汚い言葉を撒き散らしてそれぞれの部屋に戻らなくてはならなくなってしまいました。 男はなんともみっともなくも情けない醜い光景だなぁと、むなしくさびしい気持ちで天使を振り返りました。

天使と男はそのときもう一方の大きな門の前に立っており、その門には『天国』と書かれていました。
天使は扉を開けて男を中に招き入れました。
門の中には大きな建物があり、やっぱりちょうど食事の最中でした。
いくつもの長いテーブルがならんでいて、そのそれぞれの両側に何万という人たちが今まさに食事をしているところでしたが、さっきとは違って楽しそうです。
テーブルにはやっぱりさっきと同じように沢山のご馳走が並び湯気を立ててとてもおいしそうですし、人々の持っているスプーンもフォークもやはりさっきと同じようにとても長いのですが、別にけんかをするでもなくそれぞれの目の前に並べられた食事は順調に減って、皆とても満足そうです。
すると天使が「人々をよく見るんだ。」といったので、男は人々の様子をじっと見てみると、人々はそれぞれのもっている長いスプーンとフォークを使って、テーブルの向こうの食事を取ると、それをそのまま目の前に座っている人の口に運んでいたのです。向かい合った者どおしがお互いに相手の口に食事を運びあっているので、皆それぞれ十分に食べ、満腹してとても幸せな様子なのです。
様子をみていた男はとてもうれしくなり、天使を見ると、天使と男はもといた場所に戻ってきていました。
天使は言いました。
「どうだね。お前はどちらへ行きたいかね?」
「もちろん天国のほうです。」そういう男に向かって天使はうなずいて言いました。
「では、天国へいくにはどうしたらいいか分かったかね?」
「はい、自分のことばかり、自分のためばかりに働くのではなく、人のため、人のことに心を向けて相手が喜ぶようにすれば自分も喜べるようになると思います。」
男がそう答えたとき、天使の姿は見えなくなり、それからは、男は天国と地獄の様子を皆に話して聞かせながら、毎日人のために尽くしたので、男が死んだときにはあの天使がやってきて、仲良く天国の食卓を囲んで食事をしたということです。

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