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はくちょうのおうじ

むかしあるところに、十一人の王子と、ひとりのお姫さまを残して、やさしいおきさきが亡くなりました。 お城には、新しいおきさきをむかえられましたが、そのおきさきは、いじわるなおそろしい魔女(まじょ)だったのです。 魔女はちいちゃないもうとお姫さまを、いなかへ連れていって、お百姓の夫婦にあずけ、そして、のろいをかけて王子たちを白鳥に変え、お城のまどから追い出してしまいました。

お姫さまが十五才になったとき、またお城にかえることになっており、久しぶりに帰ってきたお姫様はお兄さんたちがいないので、回りの人に聞いてみましたが、だれも教えてくれません。 お姫さまは兄さんたちをさがしに、広い世界へ出ていきました。 お姫さまは、何日も何日も歩き続け、ある日、森の中で糸をつむいでいるおばあさんに会いました。
「おばあさん。十一人の王子を見ませんでしたか?」
と、聞くと、おばあさんはいいました。
「いいや。だが、きのう、十一羽のはくちょうが、あたまに金のかんむりをのせて、すぐそばの川でおよいでいるところをみましたよ。」
「兄さんたちかもしれないわ!」
お姫さまは川へ行き、あたりを見回しましたが、お兄さん達の気配はなく、そこには白鳥の羽が落ちているだけでした。

日が暮れるころになり、十一羽の白鳥が、頭に金のかんむりをのせて、丘のほうへとんでくるところをお姫様は見つけました。 お姫様は丘にあがって、そっとしげみかげにかくれました。白鳥たちは、すぐそのそばへおりて来て、大きな白いつばさをばたばたやりました。 いよいよお日さまが海のなかにしずんでしまうと、とたんに、白鳥の羽根がぱったりおちて、十一人のりっぱな王子になりました。それを見たお姫さまはおもわず、あッと大きなさけび声を出すと、王子達も妹に気づき、久しぶりの再会に泣きながらみんなで抱きあいました。
でも夜が明けると、王子たちはまた、白鳥になって飛んでいかねばなりません。
「お兄様たちは、どうしたら、魔法がとけるの?」
すると、兄さんの一人がいいました。
「森の中で出会った糸をつむいでいるおばあさんが言っていたんだが、僕達が魔法がとけるには、イラ草をつみ、足でふんで糸を取り、布におりあげて十一枚のシャツをぬうんだ。そうすると魔法がとけるんだが、でも作っている間は、ひとことも口をきいてはいけないんだよ」
「わかったわ。私がきっと、お兄さんたちの魔法をとくわ」
それからお姫さまは、まいにち、まいにち、野へ出てイラ草の草をつみました。 イラ草の草のトゲで白い指から血が流れ、足は傷ついてヒリヒリと痛みましたが、言われたとおり、泣き声も立てませんでした。

ある日、若い王さまが、その傷だらけのお姫さまを見て、心配して、自分のウマに乗せてお城へ連れていきました。 それから王さまは、お姫さまとりっぱな結婚式をあげましたが、お姫さまが口を開いて話をすることはありませんでした。 さらに、お城にはイラ草が生えておらず、近くのお寺の墓地へいけば、イラ草が生えていることを知ったので、お姫様は夜な夜なお城を抜け出して、墓地に生えているイラ草をつんでは、糸で布をおりました。
やがて、王様が夜な夜なお姫さまが外に出て行くことに気がつき、ある晩、お姫様の後をついていくことにしました。そして、お姫さまが墓地に入っていくところを見てしまいました。
それからこっそりお城に戻ってきたお姫様に
「口もきかず、みょうだと思っていたが、これでわかった。おまえは、魔女であろう!」
そういうと、お姫様をろうやに入れることにしました。
(わたしは魔女ではありません。この十一枚目のシャツにそでをつけてしまえば、お話しできるのです)
お姫さまは心の中でさけびながら、ろうやに連れていかれる馬車の中でも、せっせとシャツを作り続けました。馬車がろうやの近くにきたとき、とつぜん、空からバタバタと羽音がして、11羽の白鳥が追いついてきました。  お姫さまは、かかえていたシャツを白鳥に投げかけると、白烏はみるみるうちに、十一人の王子になったのです。

「王さま、今こそ、全てをお話しいたします! わたしのお兄さんに魔法をかけたのも、すべて魔女のしわざです!私に罪はありません。」
お姫さまは、今までのことを残らず王さまにお話ししました。
それからお姫様はお兄さん達と一緒に幸せに暮らしました。

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