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とっつこうか ひっつこうか

むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
あるとき、お爺さんは、山へ木をきりに行き、日が暮れてもカキンカキンきっていたら、山の中から、
「とっ付こうか、ひっ付こうか」
という声が聞こえてくるではありませんか。
お爺さんは、ああ気味悪いと思い、知らぬ顔して木をきっていると、また、
「とっ付こうか、ひっ付こうか」
と、言ってきました。
『こんだけ年を取ったんじゃ。何が来ても、ま、恐れることはない』
こう思って、
「とっ付きたきゃあ、とっ付け。ひっ付きたきゃあ、ひっ付け」
と、言うと、身体(からだ)が重く重くなって来ました。
「こりゃおかしなことじゃ。何がひっ付いただろうか、ひどく重たくなってきた」
と、やっとこさで家へ帰って来ました。
「婆さんや、何か知らんがこんなにたくさんついたが、まあ、見てくれ」
それで帯(おび)をといて見たところが、小判(こばん)がいっぱい身体にひっ付いているではありませんか。
「ありゃ、こげなええ物がひっ付いて。良かったのお、お爺さん」
「ほんとに、のお、お婆さん」
と言って、二人で喜んでその小判を集めました。
ところが、それを隣のよくばりな爺さんが見ており、次の日、雨が降るのに山へ行きました。
真似(まね)をして木をきっていると、日が暮れた頃、
「とっ付こうか、ひっ付こうか」
と、聞こえて来たので、よくばりなじいさんは、これだ、これを待っていた、と思い、さっそく
「とっ付きたきゃとっ付け、ひっ付きたきゃひっ付け」
と、言い返すと、ほんとに身体が重くなってきました。
こりゃまあ、たくさん小判がひっ付いたぞ、一枚でも落しては困ると思って、そろりそろり歩いて家に帰りました。
「婆さんや、まあ見てくれ。わしにも重たいほどひっ付いたで」
「そうかえ、どれどれ」
と、婆さんが、見てみると、何と、よくばりな爺さんの着物には小判ではなく、蛇(へび)やら、みみずやらが、いっぱい付いていました。
二人は驚き、急いで蛇やみみずをとろうとしましたが、ひっついたものはよくばりな爺さんから取れることはありませんでした。

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