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くつやのこびと

昔ある町に、若い頃からずっとまじめに靴を作り続けてきたおじいさんがおばあさんと住んできました。
若い頃は朝から晩まで靴を作り続けてもそれほど疲れることもありませんでしたが、 さすがに近頃では、一日に数足、雨や曇りで手元が暗くなるとランプをともしても一足を仕上げられれば上出来というようでした。 おじいさんの腕は確かでしたが、時代の流行とはちょっと違っていたので、やっと作って店に飾っておいてもなかなか売れず、おじいさんもおばあさんも苦しい生活をしていました。
そしてある日、とうとう、もうこれで靴を作ったら次の靴を作る為の皮がなくなってしまうという、そんなところまできてしまいました。
「これが最後の靴になってしまうんだなぁ・・それならこの最後の靴を一生懸命良い靴に仕上げよう!」
おじいさんはそう思って、丁寧に型紙に添って慎重に皮を切り始めました。 やはり、それは時間がかかり、手元も暗くなり、ようやく皮を切り終えても針に糸を通して縫い始めることは出来なかったので、 続きは明日にしようとおじいさんは、仕事場の机の上に切り取った皮を丁寧に並べて、おばあさんの作った夕食を食べに行きました。
次の朝、おじいさんは仕事場に行って、びっくりしました。
なぜならそこには昨日切っておいた皮をすっかり綺麗に縫いあげた靴が、素晴らしい出来でそろえてあったからです。 大声でおばあさんを呼んだおじいさんは、丁寧に、そしてとてもしっかりと丈夫なうえに流行も取り入れたその靴のできばえに感心しました。
「これはきっといい値で売れるぞ。ありがたい、ありがたい!」
「でも・・いったい誰が?」
「うーん・・誰だろう。」
おじいさんが思ったとおり、その靴はその日のうちにびっくりするくらいの良い値段で一人の紳士に買われていきました。 そのお金で靴2足分の皮を買いに行き、また丁寧に皮を切り、薄暗くなったので、机の上に皮を並べて仕事場を後にしました。 翌朝、仕事場に行ってみると、やっぱり昨日と同じように素敵な靴が2足、一足は若いご婦人用、一足は、紳士の為のおしゃれな靴がちゃんと出来上がっていました。 そして、また二足ともうれしい値段で売れたのでした。
おじいさんは驚くやらうれしいやらでしたが、また、そのお金をもって今度は四足分の皮を買いにいき、戻ってくるとすぐに丁寧に靴用の形に切り取って、また仕事場を後にしました。
やはり次の日の朝には可愛い子供靴にシックな婦人靴、丈夫な仕事靴と歩きやすそうな軽い靴がちゃんと出来上がっていました。 そんなことが毎日起こるので、さすがにおじいさんもおばあさんもただ喜んでいるばかりではいられなくなり、一体誰がこんなことをしてくれているのか、それを知りたいものだと思いました。

そこで、二人はその夜はいったん仕事場を出てからまた夜中にそっと仕事場をのぞいてみることにしました。 仕事場の時計がボンボンと12時を打ったころ、なにやら切った皮を置いたところで動いているものが見えました。 それは不思議なことに油のないランプに火をともし、あたりを明るくしたのですが、なんとそこには二人の裸のこびとがいたのでした。
おじいさんもおばあさんもびっくりぎょうてん。
こびとたちは「仕事だ仕事だ、いい靴作れ、僕らは靴の妖精だ、働き者のおじいさんのために、朝になるまで靴作り・・」
と歌いながら、すばやく皮を縫い、小さな槌で形を整え、最後にキュっキュっと靴を磨いて、あっという間に素晴らしい靴を作ってしまいました。 そして、靴がすっかり出来上がると、ふたりのこびとはランプの火を消して、そろそろ日の出の始まりそうな薄闇の中に消えていってしまいました。 二人は黙ってテーブルに坐っていつまでもこびとの作った靴を眺めていましたが、ふとおばあさんが言いました。
「ねぇおじいさん、あの二人のこびとは裸でしたよねぇ?」
「うん、そうだったな。靴の妖精といっていた、寒さは感じないんだろうか。」
「私、今日は二人分の小さな服をつくるわ。やっぱり寒そうだもの。」
「そうだな、それはいい考えだ。ではわしは二人のために小さな靴をつくろう!」
二人は早速ちいさな服と靴を作り始め、その日の夜、テーブルの上に、切り取った皮の変わりにそっと並べておきました。
二人はまた扉の影から仕事場をのぞいて見ていました。
時計が12時を打つとやっぱりあのこびとたちがやってきて、油のなくなったランプをぼうっと明かりをともし、テーブルの上の服や靴をみてこびとたちはびっくり。 すぐにおばあさんの作ったシャツとズボンにかわいいチョッキを着、おじいさんがつくった革靴を履いてみました。 ふたりは大喜びでお互いに腕を組んでスキップしたり歌ったりして踊り始めました。
「素敵な服だいい靴だ。僕らは靴の妖精だ、働き者のおじいさん、縫い物上手なおばあさん、二人がくれたプレゼント、大事にするよありがとう・・」
おじいさんもおばあさんもとても嬉しくなり、こびとたちも歌いながら踊りながら仕事場を出て行くと、それからはもう二度と現れることはありませんでした。 でも、おじいさんの作った靴は、それからも売れていったので、おじいさんもおばあさんも幸せに暮らしたということです。

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