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童話

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ジャックとまめの木

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むかしむかし、ジャックと言う男の子が母親と一緒に暮らしていました。
二人はとても貧乏で、とうとう、おかねになるものは、たった一ぴきのこった牝牛(めうし)だけになってしまいました。
そこで、母親は、ジャックに
「ほんとうに、つらいけれど、あの牝牛を、手ばなさなければならないことになったのだよ。市場まで牛をつれて行って、たかく売って来ておくれな。」といいました。ジャックは、牛をひっぱって出かけました。
しばらくあるいて行くと、むこうから、肉屋の親方がやって来て、
「これこれ、牝牛なんかひっぱって、どこへ行くのだい。」と、親方は声をかけました。
「売りに行くんだよ。」と、ジャックはこたえると、
「ふうん。」と、親方はいいながら、片手にもった帽子から音がするので、なかをのぞくときみょうな形をした豆がみえ、ジャックはそれがほしくなりました。
「坊や、これがほしいんだろう。いけない、いけない、こりゃあふしぎな、魔法の豆さ。ただではあげられない。どうだ、その牝牛と、とりかえっこしようかね。」
ジャックは、そのまま、牝牛と豆の袋ととりかえっこし、豆の袋をかかえて、うちまでとんでかえりました。 「おかあさん、きょうはほんとに、うまくいったよ。」と、そういって、牛と豆のとりかえっこした話をしましたが、それを聞いた母親は、
「まあ、ほんとにあきれてしまう。こんなつまらない、えんどう豆にだいじな牝牛一ぴき、なくしてしまうなんて、まあ、このばかな子をどうしましょう。」
母親はぷんぷんおこって、窓のそとへ袋の中の豆をなげすてて、なさけなさそうに泣きだしました。
ジャックはじぶんもかなしくなり、おなかのすいたまま、ころんとねてしまいました。

そのあくる朝、ジャックは目をさまし、ふと窓のそとをみました。すると、きのう庭になげすてた豆の種から、芽が生えて、ひと晩のうちに、ふとい、じょうぶそうな豆の大木が、みあげるほどたかくのびているではありませんか。
豆の木は、空の上までものびていました。
「あれをつたわって、のぼって行ったら、どこまで行けるんだろう。」
ジャックはさっそく、豆の木をどんどんと登り、雲を越えても、豆の木はまだまだ続き、そしてとうとう、ジャックはてっぺんに着きました。
そこには、大きなお城がありました。
とんとんと門をたたくと、なかから、鬼のお上(かみ)さんが出て来て、ジャックに気が付くと、
「あんたどこから来たんだい。ここは、人くい鬼のうちだから、みつかると、子供は晩のごはんのかわりに、すぐたべられてしまうよ。」といいました。その時、ずしん、ずしん、地ひびきするほど大きな足音がきこえて来ました。それは主人の人くい鬼が、そとからかえって来たのです。鬼のお上さんは、
「しかたないね。こっちへきなさい。」そういって、大あわてにあわてて、ジャックを、だんろの中にかくしてしまいました。
鬼は、へやの中にはいると、たれだってびっくりしてふるえ上がるような大ごえで、
「フン、フン、フン、子供のにおいがするぞ。生きていようが死んでよが、骨ごとひいてパンにしよう。」
と、いいました。すると、お上さんが、
「いいえ、それはあなたが、つかまえて、土のろうに入れてあるひとたちの、においでしょう。」といいました。
けれど鬼の大男は、まだきょろきょろそこらを見まわして、鼻をくんくんやっていました。でも、どうしても、ジャックをみつけることができません。
とうとうあきらめて、鬼は、椅子の上に腰をおろし、そしてがつがつ、がぶがぶ、たべたりのんだりしはじめ、たらふくたべてのんだあげく、お上さんに、
「おい、にわとりをつれてこい。」といいつけました。
それは、ふしぎなめんどりで、テーブルの上にのせて、
「うめ。」といいますと、すぐ金のたまごをひとつ生みました。鬼がまた、
「うめ。」といいますと、またひとつ、金のたまごを生みました。
「やあ、ずいぶん、とくなにわとりだな。あれを持って帰ればお母さんも喜ぶに違いない。」と、ジャックはそうおもいました。
鬼はおもしろがって、あとからあとから、いくつもいくつも、金のたまごを生ましているうち、おなかがいっぱいでねむたくなったようで、すごい大いびきを立てながら、ぐっすりねこんでしまいました。
ジャックは、鬼がすっかりねむったのを見て、そっとだんろの中からぬけだしテーブルの上のめんどりをかかえ、すたこらお城を出て行きました。それから、どんどん、どんどん、かけだして行って、豆の木のはしごのかかっている所までくると、するするとつたわっておりて、うちへかえりました。
ジャックのおかあさんは、むすこがぶじでかえって来たので、とてもよろこびました。それからは、ジャックのもってかえった、金のたまごを生むにわとりのおかげで、おや子はお金もちにもなりましたし、しあわせにもなりました。

しばらくすると、ジャックはまた、もういちどお城に行ってみたくなり、豆の木のはしごを、またするするとのぼって行きました。鬼のお城につき、今度は、あかがねの箱の中にかくれていると、大男がかえって来て、またそこらをくんくんかいでまわりましたが、ジャックは、みつかりませんでした。
大男は、晩の食事を食べたあと、こんどは、金や銀のおたからのたくさんつまった袋を出させて、それをテーブルの上にあけて、一枚一枚かぞえてあそんでいましたが、ま袋の中にしまって、ひもをかたくしめました。そして、大あくびをひとつして、それからぐうぐう、大いびきでねてしまいました。
そこで、ジャックは、そろりそろり、金と銀のおたからのいっぱいつまった袋を、両方の腕に、しっかりかかえ、にげだして行きました。ところが、この袋の番人に、一ぴきの小犬がつけてあったので、そいつが、きゃんきゃんほえだしました。
ジャックは、だめかとおもいましたが、大男は、よくねていて、目をさましませんでした。ジャックはむちゅうで、かけて行って、とうとう豆の木のはしごに行きつきました。
おもたい金と銀の袋を何度も落としそうになりましたが、それでも我慢し、豆の木のはしごをおりました。
うちまでたどりつくと、おかあさんは、ジャックが戻ってきたので大喜びし、お金がたくさんできたときいて、よけいげんきになりました。
こうして、またしばらくの間、ジャックは家でおとなしくしていましたが、またお城に行ってみたくなったので、そっと豆の木のはしごをのぼりました。お城につくと、すぐに大男がかえってきたので、あわてて、今度はお釜(かま)のなかにかくれました。
さて、それから鬼の大男の晩飯がすむと、お上さんに、
「にわとりはとられる、金の袋、銀の袋はぬすまれる、しかたがない、こん夜はハープでもならすかな。」といいました。
ジャックが、そっとお釜のふたをあけてのぞいていると、玉でかざった、みごとなハープのたて琴がありました。
鬼の大男は、ハープをテーブルの上にのせて、
「なりだせ。」というと、ハープは、ひとりでになりだしました。しかもその音(ね)のうつくしいこと、ジャックは、金のたまごのにわとりよりも、金と銀とのつまった袋よりも、もっとこのハープがほしくなりました。
そのうち、ハープの音楽を子守うたにして、鬼も、いい心地でねむってしまったので、ジャックは、そっとお釜の中からぬけだすと、ハープをかかえてにげだしました。ところが、このハープには、魔法がしかけてあって、大きな声で、
「おきろよ、だんなさん、おきろよ、だんなさん。」と、どなり始めたので、大男も目をさまし、むうんと立ち上がってみると、ちっぽけな小僧が、大きなハープをかかえて、にげて行くのに気づきました。
「待て小僧、きさま、にわとりをぬすんで、金の袋、銀の袋をぬすんで、こんどはハープまでぬすむのかあ。」と、大男はわめきながら、あとを追っかけました。
「つかまるならつかまえてみろ。」
ジャックは、まけずにどなりながら、それでもいっしょうけんめいかけました。
ジャックは、ハープをかかえて、豆の木のはしごをおりはじめ、はるか目の下に、おかあさんが、泣きはらした目で、空をみつめていました。
そうこうするうち、大男が追いついてきて、あと一歩のところまできています。
「おかあさん、斧(おの)をもってきておくれー。はやく、はやく。」と、ジャックは、上からせいいっぱいさけびました。
大男はみしり、みしり、はしごをつたわって来ており、ジャックは、たかい上からとびおりました。
そこへおかあさんが、斧をもってかけつけたので、ジャックは斧をふるって、はしごの根もとから、豆の木をぷっつり切りはなしました。豆の木は切れて、まだはしごの途中にいた大男は高い空の上から落ちていき、そのままどこかへ消えてしまいました。
それからジャックは、お母さんと二人でいつまでも幸せに暮らしました。

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