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童話

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マッチうりの少女

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それは、ひどく寒いおおみそかの夜のことでした。あたりはもうまっくらで、こんこんと雪が降っていました。 寒い夜の中、みすぼらしい一人の少女が歩いていました。ボウシもかぶらず、はだしで、足は寒さのために赤くはれて、青じんでいます。 少女の古びたエプロンの中にはたくさんのマッチが入っています。手の中にも一箱持っていました。
「マッチはいりませんか。マッチを買ってください。」
少女が一日中売り歩いても、買ってくれる人も、一枚の銅貨すらくれる人もいませんでした。 少女はおなかがへっており、寒さにぶるぶるふるえながらゆっくり歩いていました。 どの家のまども明かりがあかあかとついていて、おなかがグゥとなりそうなガチョウの丸焼きのにおいがします。
「ああ、お腹がすいた。そうか、今日はおおみそかなんだ。」
と少女は思い、 疲れていたため地べたにぐったりと座りこんで、丸くなりました。
少女には、家に帰る勇気はありませんでした。なぜなら、マッチが一箱も売れていないので、一枚の銅貨さえ家に持ち帰ることができなければ、お父さんはぜったいホッペをぶつにちがいないからです。
「そうだ。マッチであたたまろう。」
少女はマッチを箱から取り出して、「シュッ!」と、こすると、メラメラともえだしました! あたたかくて、明るくて、小さなロウソクみたいに少女の手の中でもえるのです。本当にふしぎな火でした。
まるで、大きな鉄のストーブの前にいるみたいでした。いえ、本当にいたのです。目の前にはぴかぴかの金属の足とフタのついた、あたたかいストーブがあるのです。
「あたたかいわ。」
少女はもっとあたたまろうと、ストーブの方へ足をのばしたそのとき! マッチの火は消えて、ストーブもパッとなくなってしまい、手の中に残ったのはマッチのもえかすだけでした。 少女は別のマッチをカベでこすりました。すると、火はいきおいよくもえだしました。光がとてもまぶしくて、カベがヴェールのように透き通ったかと思うと、いつのまにか部屋の中にいました。
テーブルには雪のように白いテーブルクロスがかかっていて、上にごうかな料理と、おいしそうなガチョウの丸焼きがのっていました。
「わあ、おいしそう」
そのとき、またマッチが消えてしまいました。よく見ると少女の前には、冷たくしめったぶ厚いカベしかありませんでした。

少女はもう一つマッチをすると、今度はあっという間に、少女はきれいなクリスマスツリーの下に座っていたのです。ツリーはとても大きく、きれいにかざられていました。 それは、少女がガラス戸ごしに見てきたどんなお金持ちの家のツリーよりもきれいでごうかでした。少女が手をのばそうとすると、マッチはふっと消えてしまいました。 たくさんあったクリスマスのロウソクはみんな、ぐんぐん空にのぼっていって、夜空にちりばめた星たちと見分けがつかなくなってしまいました。そのとき少女は一すじの流れ星を見つけました。
「だれかが死ぬんだ……」
と、少女は思いました。なぜなら、少女のおばあさんが流れ星を見るといつも、「人が死ぬと、流れ星が落ちて命が神さまのところへ行く、」と言っていたからです。 でも、そのなつかしいおばあさんはもういません。少女を愛してくれたたった一人の人はもう死んでいないのです。少女はもう一度マッチをすると、少女のまわりを光がつつみこんでいきます。
前を見ると、光の中におばあさんが立っており、明るくて、本当にそこにいるみたいでした。むかしと同じように、おばあさんはおだやかにやさしく笑っていました。 「おばあちゃん!」と、少女は大声を上げました。
「ねぇ、わたしをいっしょに連れてってくれる?マッチがもえつきたら、おばあちゃんもどこかへ行っちゃうんでしょ。あったかいストーブや、ガチョウの丸焼き、大きくてきれいなクリスマスツリーみたいに、消えちゃうんでしょ」
少女はマッチの束を全部だして、残らずマッチに火をつけました。そうしないとおばあさんが消えてしまうからです。マッチの光は真昼の太陽よりも明るくなり、赤々ともえました。 明るくなっても、おばあさんはいつもと同じで、昔みたいに少女をうでの中に抱きしめました。そして二人はふわっとうかび上がって、天高く昇っていきました。

朝になると、少女がカベによりかかって、ほほえんで動かなくなっていました。その手には、マッチのもえかすの束がにぎりしめられていました。
「この子はマッチであたたまろうとしたのね……」
と、人々は言いましたが、少女がマッチでふしぎできれいなものを見たことも、おばあさんといっしょに天へ昇っていったことも知る人はいませんでした。

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